FC2ブログ

あと半級のジレンマ ~湿摩擦の基準値が妥当かどうか~

PIJ-INC

-
Fotolia_156098372_XS.jpg

FROM:飯田雅章
篠崎本社より

一月前、コーデュロイの湿摩擦の結果がどうしてもよくならない、ということで相談の電話を受けた。

私のブログを見たという。

もう三度も、検査機関の出しているが、一色は1級、もう一色は半級基準値に満たないという。

納め先の基準も少々不条理でこの素材をここまで厳しい基準にする事はないように思えた。

なぜなら、コーデュロイのように起毛効果を狙った素材に於いて、湿潤した状態は、繊維が膨潤している上に毛先が摩擦によってフィブリル化し、添付白布にその毛先が切れ切れになって付着したものまでグレースケールで評価し、色移りの現象にとらえてしまうからだ。

はっきり言って、ガムテープでパタパタすると毛羽が取れて付着した色が薄くなり、簡単に1級ぐらい上がることも考えられる。

お客様は、中国での生産を止めれば納期は間に合わないし、かといってこのまま進むと納品させてくれないかもしれず、どうにも辟易としている。

電話の向こうのお客様が頭を抱えているのが、手に取るようにわかった。

こちらの経験上、うちで引き受ければ何度も試験加工をする事になり、その度にテスト料金3,000円を頂く事になりそうだった。

今回の試験結果情報から、一度や二度の加工では済まない可能性もあった。

そのお客様は、それでもいいぐらい切羽詰まっている様子だったが、うちに送ればやり取りだけで二日かるし、必ず試験に合格するかどうかはまだ物も見ていないから断言できずにいた。

何より、これほど検査に合格しないと検査機関の費用もすでに数万円にもなっている上に、うちで加工したものもまた検査に出さなきゃならない。

だから、なんとなく気が引けて、うちには送らずに、家庭でもできる加工方法であと半級から1級、上がるやり方を教えてあげた。

ここでは、その方法は言えないが・・・

そして、お金ももらっていなかったので、かねてより物忘れの激しい私の脳の中からその事は排除されていた。

そして、先週。

こんなメールが来た。

飯田様

先日は大変お世話になりました。

いただいたアドバイス通りに処理した結果、無事合格しました。

ブラックは半級、ネイビーは1級アップでした。

 

本当にありがとうございました。

また何かありましたら、相談に乗っていただけたら幸いです。

 

よろしくお願い致します。




なんて義理堅いお客様なのか。


本来、ものつくりの工程にはトレードオフという概念が存在するはずだ。


作り手が依頼を受けたものを完成させる時、現在の技術レベルでは設定された堅牢度基準値達成が難しいなら、その場に限って発注先も妥協をして、市場に送りだすというものだ。


まさにそれが、あと半級、の事である場合が非常に多いのである。


つまり、あと半級が厳しすぎる基準だと言えるのではないかと思うのである。


今回の場合は、納め先は頑として譲らなかった。


そうして、このお客様はうちのサイトにたどり着いた。


こんなブログがきっかけでお役に立てたのなら、あと半級の厳しさ、にも感謝するべきか。





関連記事
スポンサーサイト
Posted byPIJ-INC